20世紀を振り返ると私たちは生活の向上を目指してエネルギー供給網や交通網などの社会基盤を急速に発展させてきました。これらのシステムが止まると大きな社会混乱が生じます。現在、高度経済成長期に作られた社会基盤構造物の高経年化(老朽化)が問題となっています。それらを安全に保ち、長く活用していくことが求められています。このような社会的要請に応えるため、高経年化機器構造物の材料劣化診断を行うための新しい非破壊検査技術の研究を進めています。
金属材料の劣化の原因である格子欠陥(原子配列の乱れ)の形成や金属組織の変化と、様々な物性(磁性・超音波特性・伝導性)の変化との対応関係を調べる原理的研究を行っています。それらの成果は原子力・火力発電施設や橋梁などの機器構造物の劣化診断へ応用できます。さらにこの技術は、自動車材料などの各種金属製品の非破壊品質評価にも活用できます。私たちのグループでは、材料劣化診断・材質評価の新しい技術開発を切り口として、21世紀に発展する「保全工学」の構築を目指しています。